垂直方向に移動する力は重力によって影響を受ける。つまり重いほど持ち上げるのに必要な動力が増える。
例えば同じ1%の勾配であっても、重量が大きい方がより大きな動力を必要とし、その分前進の妨げとなる。更に勾配が増すほど、垂直方向への移動が大きくなる為、一層前進を妨げられる。極論、重量が0kgであれば、たとえ45度の勾配であっても妨げられる事は無い。
この重量とは、「ライダーの体重」と「車体重量」を足したものである。
バイクの軽量化
UCI(世界自転車競技連合)では、過熱する車体の軽量化(それはすなわち強度の低下を伴なう)を抑制する為、車体重量を6.8kg以上と定めている(もっとも、UCI主催でないレースや日常の交通走行では無関係だが)。
これは逆に言うと、車体重量が6.8kg以上あるバイクは、その分ハンディを負う事になる為、出来る限り6.8kgに近づけるよう努力したい。
車体の軽量化には、残念ながらお金が掛かる。軽い部品は得てして高額な部品であり、基本的に金をつぎ込むほど軽くなる傾向が強い。
その中で、特に重量を落とすのに有効な自転車部品を取り上げる。。
1、駆動・制御部品
シフトレバー・クランク・ディレイラーなどの、自転車の駆動・制動部分を担う部品群である。この部分は自転車の中で占める重量の割合が高く、その分軽量化をする余地が多いにある。
例えば、SHIMANOの2300モデルをULTEGRA6700に取り替えると、半分近い約1.5kgの軽量化となる。コンポーネントはすべて揃えると高額となるが、1g辺りに掛かるお金で見ると、それほど高額ではない。
2、フレーム&フォーク
こちらも車体重量の多くを占める為、落とせる重量も大きい。自転車の部品は、このフレームにくっつけて組み立てていく為、大元であるこのフレームを軽くしておくと、落とす事が出来る重量の限界を低く出来る。
1.5kg前後で10万円前後だと相当効率は良い。軽いと1kgを切るものもあるが、ものによっては1g辺りに掛かる金額が高いものもある。なお、フレームの重量に、フォークの重量を加えていないケースもあるため、注意が必要である。
3、車輪
駆動部やフレームに比べると、落とせる重量は半分程度となるが、値段は変わらない事も多いため、1g辺り落とすのに掛かる金額は倍になってしまう。ただし車輪は移動に直結する部分であり、軽い車輪は回りやすいなど、単純に重量以上の効果がある。
多くの自転車では、重い部品ベスト3である、「駆動・制御部品」「フレーム」「車輪」の3つを軽量化すれば、大幅な重量低下に繋がる。元が10kg程度の自転車であれば、この3つの交換で7kg台は問題なく落とし込める。
これに以外に、元がそれほど重くないので、落ちる重量も数十グラム程度であるが、金額が小額であり、比較的調達し易い部品を3つ上げる。
・シートポスト
200g以下で1万円前後が理想。120gを切る2万円程度のものもある。垂直タイプのシートポストほど余計な部品がない分軽い。また、必要以上に長い場合は、カットすれば更に軽くなる。
・サドル
200g以下で1万円前後が理想。高級品では100gを切るものさえあるが、非常に割高になりやすい。また軽いほどクッション性が無いとみてよい。
・ハンドル
こちらも200g前後で1万円前後。170gを切る2万円程度のものもある。横幅が狭いものほど軽くなるが、ライダーの体格と相談する必要がある。
ただし、軽量化は肉薄となり、強度が低下する欠点がある。特に「重量制限」が記されているホイールなどは、その分の強度しかないと思った方が良い。
ヒルクライムレースの為の軽量化
レースの中には、登り坂しか存在しないレースがある。これらレースで、6.8kgに出来るだけ近づけたい場合、最後の一押しとして軽くする方法を4つ取り上げる。
・フロントアウターリングを外す
大ギアを使用しない事を前提に、インナーギアだけにしてアウターを外してしまう。およそ100〜150g程度軽くなる。ただしインナーギアだけに出来ない構造のものもあるため、その場合は軽量化はできない。
・フロントディレイラーを外す
フロントを変速する必要が無いのだから、ディレイラーを撤去する。合わせてワイヤーも撤去する。およそ100〜150g程度軽くなる。
・チェーンを短く切る
アウターを使わないのだから、たるんだ不要なチェーンは切ってしまう。およそ数十g軽くなる。
・バーテープを撤去する
ちりも積もれば1kg削減の典型だが、バーテープ自体は20〜50g程度ある。エンドキャップも不要、更に徹底的になるなら、シフトレバーのラバーキャップも外してしまう。意外に肉厚で、両方で50g程度ある。
ライダーの軽量化
重量低下において、その占める割合が圧倒的に高いのは、乗車しているライダー自身の体重である。
車体を軽くするのには資金面の負担が大きく、6.8kg以上という制限があるが、それに比べて金も掛からず、人によっては10kg以上も軽量化出来るのが、ライダーの痩身である。特に、ほとんど使う事がない大量の脂肪を、わざわざ山の頂まで運ぶ必要はない。
これらを取り扱った「痩身」ついては、内容が好評であった為、別項目で取り扱うこととする。
ここでは、それ以外のライダーの軽量化を挙げる。
●装備品
忘れがちなのが、ライダーが装備しているものである。つまり、服、ヘルメット、靴、などがある。一つ一つは小さいが、全て集めると大きな重量差が出る。例えば、アームカバーやレッグカバー、インナーシャツなどを合計すると、0.7kg〜1kg近くになる。
これら点から、走行に支障の無い程度で、不要な装備は撤去し、重量を抑えるのが有効である。例えば、1時間程度のヒルクライムレースであれば、アーム・レッグカバーは使わず日焼け止めを塗るとか、ジャージ一枚でインナーは着ないとか、サングラスを掛けない、靴下を履かない、などの方法が挙げられる。
また、ヘルメット、バイクシューズも重量としてそこそこあり、軽いものと重いものでは200g程度の違いがある。
●水、食料
水は500mlで0.5kgであり、2本も携帯したら大幅な重量加算となる。そのため、登りでは必要以上の水や食料を持たず、登った後に水を調達するなどの重量計画が有効である。
特に1時間も掛からないようなヒルクライムレースの場合、スタート前にある程度飲んでおけば、余程猛暑でない限り、給水しなくとも完走可能である事も多い。水自体を持たなければ、ボトルケージもボトルも持たずに済む為、更なる軽量化を実現する。日常の走行においても、水を補充した直後に山を登ったりせず、頂上又は下り、あるいは下り終わってから調達した方が無駄な重量加算にならない。
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