スプリント 
一瞬で達する、爆発的な力

 スプリンターの中の脚質
スプリントはおよそ8〜12秒程度で力尽きる、しかしそのスプリントの中でも、更により一瞬に力を発揮するタイプと、持久力に優れ、高速を維持する時間が長いタイプに分かれ易い。
陸上の100m走のように、走る距離が必ず決まっている訳ではないから、持久力と持続速度に自信のある選手は、40秒程度のロングスプリント(陸上でいう400m)を仕掛ける事もあるし、最後の最後の5秒勝負になる事もある。各々が、自分の脚質に合わせ、もっとも勝ちの可能性が見込めるタイミングからスプリントを仕掛ける。

スプリント勝負になっても、この特性から、得意とする攻め方や戦略が変わってくる為、自分がどのようなスプリントを得意とするか、あるいは得意とするであろうか、スプリンターの中で、更に分類される脚質を理解する事は、トレーニングを行なう上で大変重要になる。ここでは主に競輪で用いられる3つの用語なども加えて取り上げる。

先行・逃げタイプ

高速を持続させる時間が長い持久タイプである。瞬間的な急加速より、長い時間を一定の高速(ロングスプリント)で走行する力に優れる選手に向く。単純に、年齢が若い=体力がある選手が向くとして、競輪では若い選手が先行するように番組される事も多い。
主に先頭を走り、そのまま力尽きる事無く、後者に追いつかれる前に逃げ切ってしまったり、早い段階からの高速化をして、他者の体力を奪う戦法を得意とする。

ロードレースにおいては、TTスペシャリストなど高速を持続させる事が得意な選手が、40秒ほど手前など、生態学的にスプリントで走り切れる最長距離を見定め、限界のタイミングを狙って仕掛ける事が多い。

問題は、後ろに選手を引き連れてしまっては、ただのアシストに終わってしまう為、後続の選手が疲労するほどの高速を示すか、一時的に急加速をするなどして、後続を振り切り、そのまま独走する作戦などを考えなければならない。


追込・差しタイプ

瞬間的な急加速を得意とし、主に先行者の後ろに入って走り、最後の最後に温存した体力を爆発させて、ゴール直前で抜き去る戦法を得意とする。キレと称される急加速が得意な選手が取り易い戦法であり、多くのスプリンターが狙ってくる。

この場合、先行する選手を最後まで残し、最後に自分が抜き去る事を狙う為、途中で先行する選手を抜く事は無く、むしろ先行選手が自分の後ろに回らないよう防御する事もある。先行する選手との体力差を計算し、ここから加速すれば逆転できると見込める場所から急加速をして、最後に引っくり返す。ただし同じ事を狙っている選手が他にいる場合は、その選手に抜かれない為に、早めに抜け出すなどの戦術が必要になる。

ロードレースにおいては、走行する選手の人数が多いため、どの選手の後ろに付くのが都合が良いか、あるいは乗り換えるかと言った反応の良さも重要になる。


捲りタイプ

前にいる走者とは別のラインを走り、それ以上に速く走って問答無用で抜き去る戦法。

特に、追い抜きたい前方の選手が長い列を作り、自分の位置がずいぶん後方になって不利と判断出来る場合は、ドラフティングを無視して飛び出し、別のラインで自力で追い抜きをかけなければならない。

戦法は、主に集団の真ん中か、先頭グループの後方に位置し、残り数100mという位置からラインを抜けて1人怒涛の如く突き進み、そのまま先行グループを別ラインで抜き去り、後ろについてくる選手をも抜かせない程の爆走をして逃げ切る。
そのため、後続を振り切り、かつ先行を抜き去る凄まじいまでの急加速と持続力が求められる。
世界選手権10連覇の中野浩一はこの戦法で勝利を量産した。

特に、先行している選手が弱く、早い段階からラインが崩壊すると読める時や、けん制によって集団が十分な速度まで上がらない時にも、これらを無視して1人飛び出して速度を上げ、後続が加速して追いついてくる前に、勝ち逃げするという状況において有効となり、その状況を見定めるのに長けた選手に向く。。


オールラウンドタイプ

先行で逃げ切るロングスプリントを得意としながらも、追い込みによる急加速も得意とするなど、様々なスプリント形態を得意とする人もいる。


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