持久力 
運動を長く続ける力
持久力とは、連続して運動をし続ける力の事である。人の体は、運動を行なうのにエネルギーを必要とする。このエネルギーを連続して供給し、運動を連続して実行し続ける力の大小が、すなわち持久力である。

人は運動をすると酸素を大量に必要とする。その運動が強いと、次第に酸素が不足するようになる。この低酸素状態が慢性的に続くと、体は酸素を取り込む力が不足していると判断し、 この事態に対処する為、酸素をより多く取り込む事が出来る体作りを始める。エリスロポエチンというホルモンを分泌して骨髄で造血、赤血球を新生させ、血中の酸素運搬能力を強化し、低酸素状態を解決しようとする。

運動すると、脈拍が増加し、次第に心臓が鼓動できる限界に近いところまで達する。すると体は、心臓を拡張(大きく)して、一回の鼓動で大量の血液を送り込めるようにする心筋拡張(俗に言うスポーツ心臓)を起こし、同じ血流を、より少ない脈拍で行なえるように強化する。

高い血圧を必要とする負荷を与えると、心臓は高い血圧を実現する為に、心臓の肉を厚くし、より強く収縮して高い圧力を掛ける事が出来る「心筋肥大」を起こして耐久する。

また、手や足などが慢性的な低酸素状態やエネルギー不足になると、毛細血管を増やして隅々まで血液が回るようにし、エネルギーを末端まで送りやすくするように強化する。

これらの反応によって、ある程度の運動を行なっても疲れにくくなったり、今まで以上に強い力でも連続して運動出来るようになったりする。

まったく運動していない人が、ある程度運動を習慣として続けると、次第に運動できる時間が長くなっていく事を実感するが、具体的には上記のような肉体の変化(強化)が起こり、それによって運動に対する負荷に適応する。

つまり持久力の強化とは、「負荷」を体に与え、現在の体力ではその負荷を持久できないと理解させ、その負荷に体を適応する反応を起こさせる事で、達成される。

これは、逆を言うと、「負荷」が無くなると、体はそれだけの持久力を維持する必要が無くなる為、次第に持久力が低下する事を意味する。また、今与えている負荷に体が適応したら、更に高い負荷を与えていかなければ、それ以上の持久力向上には繋がらない。

適切な負荷を、適切な量実行していく必要を理解する。


 パワーと持久力
発揮する事が出来る力の強さと持久力は半比例する。

グラフのように、力を非常に強く使うと、その持続時間は大変短くなり、逆に力を弱めると、その分持続できる時間が長くなるという関係がある。

持久力を強化すると、非常に強い力を使っても、以前より長く持続できるようになったりする。

 3つのネルギーの生成法

下のグラフは、約3分の連続運動をした場合の、心拍数の変化を示したグラフである。
心拍数とは、1分間に心臓が鼓動した回数を差す。グラフが上に行くほど、強い運動をしている事を示す。運動の強さは、心拍数を5段階に分けて、1〜5の強さで評価される。

例えば、3分間を全力で走った場合、最初は呼吸も静かだが、次第に呼吸が早くなり、そのうち息苦しくなって、次第に力が出なくなり、運動を続ける事が出来なくなってくる。下のグラフがその模様を表している。



人は運動を行なうのにエネルギーを必要とするが、その運動に使われるエネルギーは、一つの共通する方法によって生み出されているのではなく、その運動の強さに応じて、次の3つの生産方法を使い分けて獲得している。

◆有酸素(脂質分解)
1〜3の黄色いゾーンでは、脂肪を酸素で分解してエネルギーにする。酸素を使うため有酸素運動と呼ばれる。脂肪は分解速度が遅いが、人は大量の脂肪を体に保持出来る為、普通の生活をする以上は、エネルギーが切れる事はまずない。

◆無酸素(解糖)
4〜5のオレンジ・赤のゾーンでは、糖質を分解してエネルギーをとする。酸素を使わない為、無酸素運動と呼ばれる。運動力が非常に高い為、脂肪ではエネルギーが間に合わず、即効性の高い糖質が使われる。

◆ATP-CP
グラフには記していないが、短時間で一瞬にして力を発揮する運動の場合は、ATP-CPという、非常に即効性の高いエネルギー生産方法を用いて、エネルギーとする。


このように、ヒトは運動の負荷によって、有酸素→無酸素→ATP-CPという、異なる方法のエネルギーの生み出し方を組み合わせて、力を発揮している。

エネルギーが生み出せないと、力が出なくなり、持久が出来なくなる。この、異なるそれぞれのエネルギー生産力を高め、エネルギーを素早く生み出し、運動を持続的に、特に「強い運動を持続的に」続ける能力を強化する事が、すなわち持久力の強化である。

この3つのエネルギー生成方法は、次項にて、一つずつ解説をする。

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