筋容量 
筋肉は、その筋肉を「縮める」事が出来るが、太い筋肉と短い筋肉では、この「縮める力」に差が生まれる。具体的には、太い筋肉ほど、縮める際の力が強くなる。

ここでは、説明を分かり易くするために、筋肉を収縮力のある「バネ」に例えて説明する。

図1のように、バネが縮まる力を5kgとした場合、5kgの錘までは持ち上げる事が出来るが、10kgの錘は重過ぎて持ち上げる(バネを縮める)事が出来ない。

しかし、図2のように、バネ自体を太く、強くすると、縮まる力が増大し、重い錘でも持ち上げる事が出来るようになる。


筋容量の強化とは、このバネを太くするように、筋肉繊維の一つ一つを太くする事によって、発揮する事が出来る力の限界を引き上げる事である。

筋肉を太くするには、負荷を掛ける⇒回復させるという繰り返しによって強化されていく。

◆負荷

負荷とは、重いものを持つなどして、筋肉を強く収縮し、刺激を与える事である。
全力を100%として、85%〜90%の、全力程ではないが、かなり力を込める必要がある負荷を掛ける事で積極的に強化される。
ウェイトトレーニングでは、およそ15〜20回程度の反復運動を繰り返す事が出来る負荷が該当する。
休憩時間は短く、回数を多くこなす事によって、筋肉(と脳)に刺激を与え、成長ホルモンの分泌を促し、筋繊維を太くする反応を起させる。

◆回復

回復とは、トレーニングによって損傷した筋肉を修復し、また筋肉を太くさせる休養を設ける事である。
擦り傷を例にとれば、少しずつ傷は修復され、次第に完治する。それと同じようなことが(目では見えないが)筋肉でも起こっている。特に、筋繊維が太くなるという事は、今の筋肉が少しずつ代謝しながら増強されていく事であり、その増強を促す回復期間が必要である。

◆回復期間

このように、筋容量トレーニングには、負荷を掛けた後、筋肉を修復させる回復期間を設けるのが大変重要になる。

筋肉は、トレーニングを行なうと損傷し、一度パワーが低下する。しかしそれが次第に回復すると、以前の力まで戻るのではなく、それ以上に回復(増強)する、「超回復」という現象を起す。この超回復は、適切な量のトレーニングを実行した後、およそ2〜3日後にピークを迎える。それを過ぎると次第に筋力は低下しだし、1週間程度で元の力に戻る(図3)。



この超回復を起した状態で再び負荷を掛けると、次の回復時には、更に超回復し、筋力が段階的に増強されていく。(図4)。



このように、超回復したタイミングで再びトレーニングを実行する事を繰り返すのが、筋容量を増大させるトレーニングの基本である。

適切な負荷を与えると、トレーニング後、2〜3日目が超回復のタイミングである。ただし負荷が高過ぎたり、逆に軽過ぎたりすると、超回復の期間が前後したり、あまり超回復しない事もある。

感覚的な表現をすると、筋力トレーニング翌日などは、足に力が入りにくくなったり、倦怠感を覚える。しかし日数が進むと、非常に足がよく動き、全力が出せるパフォーマンスが良い日を迎えるが、これが超回復期である。この足が非常に良く動く時に、そのパワーに合わせた負荷のトレーニングを行なう、という、この一連のサイクルを繰り返す。

◆栄養

筋肉が太くなっていく過程を説明したが、太くなる為には、「材料」が必要である。
筋肉はたんぱく質で出来ている為、たんぱく質が無ければ強化出来ない。特に、傷を修復するだけでなく、以前より太くしようとするのだから、それだけ材料であるたんぱく質を用意する必要がある。
たんぱく質は、肉、魚介、大豆、乳製品などに豊富に含まれてる。これらを摂取し、筋力増強の材料とする。
尚、特に肉類は脂質も多いため、結果的にカロリーオーバーにもなりがちであるから、プロテイン(たんぱく質)サプリメントを利用するのも一つである。たんぱく質を更に分解したアミノ酸を直接摂取するのも有効である。

摂取する量やタイミングにもポイントがある。
たんぱく質は、一食辺り、およそ30g以上は有効性がない為、3食の内でしっかりとたんぱく質を摂取する。
また、「運動後」「就寝前」は成長ホルモンが活発に出ているため、摂取が有効である。特に、就寝中が最大の増強タイムである。体は完全に回復モードに入り、あらゆる箇所を修復・強化させる。寝る子は育つというが、正解である。 就寝前およそ1〜2時間程度前に、消化のよい、適当なたんぱく質を摂取し、就寝すると良い。

トレーニング直後にたんぱく質を摂り、そのまま15分程度仮眠をとるのも有効である。
いずれにせよ睡眠は重要な筋力強化要素であり、睡眠不足は大変なマイナス行為である。

◆刺激の慢性化

筋力は、適切な負荷を加えて刺激を与え、脳に、「今の筋力ではやや不足している」と感じさせることによって、積極的な成長ホルモンの分泌を促す事を目的とする。
しかしこの刺激を継続していると、次第に体が刺激に慣れてしまい、思うように筋力が増加しなくなる事がある。
このような事もあるため、次の項目である「筋神経」とのセットによる、定期的な刺激の交代を行なう事で、慢性化を防ぐのが有効である。
また一層の事、筋力トレーニングを暫く止めて、完全な休養期間を設けてしまうのも一つである。3ヶ月程度、筋力とは違う練習を重点的に行うなど、刺激を変える。
なお筋肉は、負荷を掛けないでいると次第に低下し出すが、一度付いた筋力は体が経験として対応の仕方を記憶しており、再び強化する際は比較的短時間で元に戻る。

◆刺激の慢性化

筋肉の増大は、そのまま「重量の増加」となって現れてくる。バネが太くなるのだから、その分重くなって当然である。
そのため、体重の管理も適切に行なっていく必要がある。特に体重増加は目に見えて登りのスピードを低下させる為、どこまでの体重(筋力)増加が許せるのか、計画的に行なう必要がある。単純に増やせばよいという話ではない。

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