筋力トレーニングというと、世間的には前項の「筋容量」の事をイメージするが、筋肉の「質」である、この筋神経を理解していないと、最大の筋力を得る事が出来ない。
前項のバネに例えて説明するが、筋肉は1本だけではなく、何本もの繊維が集まって、束を作っている。そしてその筋肉には、脳から「縮め」という命令が届くよう、神経が繋がっている。
しかし、この神経が発達していないと、脳からの命令が届きにくくなり、全ての筋肉を動かすことが出来ない。それは結果的に力の低下を意味する。その様子を図5にまとめた。
この現象を体感するには、利き腕と、そうでない腕とで、物を投げる力の差を感じてみると良い。元々筋容量に差がある場合もあるが、利き腕で無い方は、思うように力が入らない事だろう。すなわち、神経が発達しておらず、筋肉を思うように動かしたり、力を発揮させたり出来ていないのである。
このため、全ての筋肉を動員し、最大のパワーを発揮するために行なうのが、「筋神経」の強化である。
神経は、脳に「不自由さ」を感じさせる事で発達していく。
具体的には、最大の力である100%の負荷を掛け、全ての筋肉を動員しなければ対応出来ない刺激を与える。
特に、筋容量強化直後は筋神経の発達が未熟であり、全力で力を出そうと頑張っても、全ての力を出し切れていない、思うように力が出ないイライラ感を持つが、これが脳に刺激となる。
筋神経は、筋容量と違い、「長い休憩時間」で、「少回数」実行する。全力を出す必要かあるため、常に全力が出せる状態に回復させて実行する必要がある。
また、無駄に回数を増やすのではなく、刺激を十分に感じながら、少回数を十分に意識して実行するのが有効である。
筋神経は、大変にパワーを要するトレーニングを実行する為、特に関節を痛め易い。また、あまりに長期間実行せずとも神経は発達していく為、当クラブでは、筋容量を2ヶ月実行した後、この筋神経を1ヶ月実行する、3ヶ月1セットプランを推奨している。
なお、筋肉の絶対量である「筋容量」に対し、「筋神経と」「筋瞬発」は、いわば筋肉の質と表現する事が出来る。これら「質」のトレーニングは、筋量の増大を伴なわない為、パワーは増えるのに体重は増えないという特徴がある。体重が逆効果となる自転車においては、この「質」をいかに高めるかが重要である。
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