脚質を知る 
特徴ある足の能力

 脚質の作り方

スプリンターを目指すなら瞬発力を、クライマーを目指すなら軽量化を、オールラウンダーを目指すなら持久力をと、脚質を意識して、自分の目指す走りを実現する強化をしていく。

しかし中には、ある一定の条件を満たしていなければ実現しにくい脚質がある。いわゆる「向き、不向き」というものだ。これらをよく理解しないと、自分には向いていない脚質を追うことになってしまったり、それを承知で努力する必要があるなど、注意が必要である。


速筋と遅筋

速筋とは、伸縮力に優れ、高いパワーを生み出す事が出来るが、反面持久力が低い筋肉である。酸素が巡りにくく、色は白い。ブリやイワシなどの白身魚が代表例である。
一方遅筋とは、パワーは弱いが長時間に渡り動き続ける筋肉である。酸素がよく巡るため、色が赤い。カツオやマグロなどの赤身魚が代表例である。

人間の筋肉も、このように速筋と遅筋があり、この両方を持っているが、人によって割合が異なる。
この割合は生まれ持ってほぼ決まっており、トレーニングによって、この割合自体を変える事は出来ない。

また近年の研究で、遺伝子的に速筋が多いタイプ、遅筋が多いタイプ、両方がバランスよくあるタイプの3つがある事が分かっている。日本人はバランス型が多い。

自分の脚の質を理解する事で、瞬発力に優れているのか、持久力に優れているのか、自分の能力の向き・不向きが分かる。

自分の脚の筋肉の割合を調べる方法は、脚を切って科学的に分析するのが確実であるが、当然現実的で無い為、「どの程度持久力があるか」を調べる事で、ある程度確認する事が出来る。

1km、3km、5km、10km、などと距離別にタイムトライアルを行い、自分の成績が特に優れている距離を測定する。

例えば競輪学校では、1kmタイムトライアルだけでなく、3kmタイムトライアルも測定しており、同じスプリンターであっても、その中で更にスピード型か持久型かの評価を行なっている。当然それによって戦法や強化も変わって来る。

自転車で連続走行するのが難しいようであれば、陸上競技のように、100m、400m、1000m、10000mの記録をとって、その成績を年代別平均記録などと比較すると、自分が短い距離に優れるか、長い距離に優れるか、全体的にそつなくこなすか、判断できる。


スプリンターは先天的

中でも、特に短い距離での成績が優れる人は、速筋が優れている。急激な加速と最高速度を誇るスプリンターは、「速筋」を多く持っている人が必然的に有利であり、逆に速筋をあまり持たない人には、大変不利である。実際問題、才能に近い。

当クラブでは、最新の研究論文などを踏まえ、才能は努力に遥かに及ばない見解を示しているが、こと速筋に関しては、どれだけ「絶対量を持っているか」で絶対的な出力の条件が決まり易く、トレーニングでこれを増加させる事が出来ず、先天的である。

例えば競輪では、他の瞬発力系種目(陸上の短距離、水泳の短距離、スピードスケートの短距離など)の一流アスリートをスカウトし、転身させているほどである。

ただし、筋肉の割合は変えられないが、強化によって少ない速筋を大きくする事は出来、パワーの割合であれば、ある程度動かすことが可能である。速筋に劣るからといって、その速筋の質は限りなく良質に強化できる。ゆえに、速筋型でなくとも、速筋の強化を無視して良いということでもない。

体格の影響

小柄な人は、筋肉を保持できる量が少ないため、最大パワーで劣り易い。反面体重は低下させやすい。

あえて示せば、大柄な人はパワー型に、小柄な人はクライマー型に伸ばしやすい。
ただし、実際には大柄でも登りが速い人、小柄だが速筋に優れた一流のスプリンターも存在する為、あくまで要素の一つとして捉えるのが適切である。

多くのプロスポーツの場合、身長180cmなど、大柄な選手が非常に多く、体格が小さい日本人は不利だと称される事が多いが、これは大きいほど筋肉を保有でき、力を発揮しやすいからである。力が非常に高く求められる事が多い各種スポーツでは、必然的にその力を持ち易い大柄な人が優秀な成績を収め易い。

しかし自転車競技は、「体重」が不利に働き、大柄であると空気抵抗が増えるという欠点がある。実際の所、エネルギー効率から言うと、小柄な選手の方がエネルギーを無駄にしていない。そのため体格差はあっても、その影響は小さくなっている。

身長180cm後半・体重80kg台のタイムトライアル世界王者がいる一方で、身長170cm台・体重50kg台でツールドフランスを制した選手がいるように、多彩な体格や体質がそれぞれの脚質を生み出し、その脚質がそれぞれ有利に働く地形や戦法があり、非常に多彩な選手が活躍しうる土壌が存在する。大会側もそれを考慮して、山で優れた選手を表彰したり、スプリントに優れた選手を表彰したりなどする。

つまりは、その自分の特徴を良く理解し、適した脚質を考えていく事の重要さがここにある。どうしてもスプリンターを目指したいなど拘りがある場合は別として、自分がもっと伸びる分野、向いている分野、チャレンジしたい分野を理解し、その能力を獲得していく事が、脚質作りの重要さである。

この話が無ければ、平地力や登坂力など、脚質の強化が場当たり的になってしまう点を、よく理解されたい。

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