ダンシングは、体重を乗せて出力を増やせる為、坂道では多用される。
が、ダンシングはシッティングに比べ効率が悪く、かえってタイムが悪くなる事も多い。
ダンシングの特徴は、以下の2つである。
1、パワーが上がる
2、それ以上にエネルギーが消耗される。
つまりは、スピードは出るが、エネルギーは割高となる。
これは、著書「ロードバイクの科学」においても実験として取り上げられ、結果、シッティングで登った方が、ダンシングで登るより明確にタイムが向上しているデータが掲載されている。
また、このようなダンシングの特性を実践していた事で知られるのが、ランス・アームストロングである。ランスは登坂時の9割をシッティングで登り、同プロ選手たちに比べてダンシングが控えめであった。むしろ、そのシッティングの有効性を高める為、当時では非常識だった、ケイデンスを高めで登るために、「コンパクトクランク」と称される小さいギアを使用し、新しいスタンダードを作った程である。
しかしダンシングが役に立たないのではなく、一時的に高い動力を出す上で、大変有効である。つまりダンシングのしどころとは、高い動力を出す方がメリットが高い場面である。
代表的な場所としては
・速度が低下しだす前(坂の前など)。
・速度が上昇しだす前(坂の終わりなど)
・極端に速度が低下する場所(速度を上げないと登れないなど)。
・アタックや追撃
・(例外的に)同じ姿勢で疲れた際のストレッチ目的
が挙げられる。
-典型的なダンシング・加速ポイント-
上の図は、登り坂の起伏などを一切考慮せず、ただ同じパワーで走り続けた場合の速度変化を見た図である。
平地では40km/hであるが(1)、坂道に入ると次第に速度が低下し(2)、坂道が終わると徐々に加速をはじめ(3)、再び40km/hに戻る(4)。
この基本的な形状を元に、坂を登るスピードを向上させる、代表的な2つのポイントを上げる。
●登坂図1、坂の手前
坂の手前から予め加速しておき、そのまま坂に入ると、加速の勢いで高速のまま一定の距離を走る事が出来る。坂に入ってからでは加速が難しいので、平地の間に加速を開始する。が、手前過ぎても坂に届く前に疲れてしまう。的確なポイントの見定めが必要である。これによって、速度の低下が抑えられ、坂道でのタイムが短縮する。
●登坂図2、登頂前
坂では速度が落ちる為、坂が終わって平地に戻った直後は低速のままである。そのため、登頂少し手前から加速をし、平地で速やかに高速閾まで回復させる。これも、平地になってから加速していたら遅れるし、手前過ぎる場所から加速しては、上りきった所で疲労し、平地で失速してしまう。
特に登頂時の誤った例として、坂のてっぺんを目標として加速し、その後の平地を失速したまま走り続けるケースである。これは大幅なタイムロスに繋がる。
このように坂道では、「坂に差し掛かる前」と、「坂が終わる前」の2箇所に加速ポイントが存在する。
一般に、図1はよく実践されているが、図2はあまり実践しているライダーを見ない。その理由の一つとして、上りきった時には疲れていて、登頂時の加速を怠るケースが上げられる。がしかし、疲れて25km/h位しか出せなくても、20km/hからダラダラ休んで25km/hに上げるより、ものの1秒のダンシングで30km/hにまで上げてから休んで25km/hに下がる方が、より前に進めるのである。上りきったら終わりでなく、上りきった後に加速してから休む事でロスが抑えられる。
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