スプリント・集団テクニカル 
集団性が戦略を生む

 集団形成

図1のように3人がそれぞれ走行している場合、それぞれの後ろに空気抵抗の低い、スリップストリーム(白い部分)が発生する。

そこで、先行する選手の後ろに人が入り、列を作ったのが、図2である。図2は、先頭の選手は空気抵抗を受けるが、2番目、3番目の選手は、それぞれ前の選手が風除けとなる為、空気抵抗の少ない中を走行出来、それだけ負荷が小さくなる。

空気抵抗は、その速度によって違うが、先頭の人に比べ2番目の人は70%程度まで負担が軽減し、3番目の人はそれよりも更に少し負担が軽減する。先頭の人も、後ろに人が入る事で気流が安定する為、多少だが負担が軽減する。

図1の場合、それぞれがバラバラに走行する為、3人とも空気抵抗を受け負担が大きいが、図2のように車列を作る事で、先頭の1人以外は空気抵抗が低減し、走行効率が向上する。


 集団の陣形

集団形成は風除けを狙ってのものであるから、その風向きや抵抗によって車列の向きが異なる。

図2は、特に風などが無い場合の陣形である。進行方向に沿ってスリップストリームが発生する為、車列も進行方向に対し直線となる。


風が斜めや横から吹く場合、車列はその向きに合わせて横に連なる陣形になる。前の人の真後ろに入っているのに空気抵抗が下がっている感じがしない場合、図3のように、風の流れが斜めや横である可能性がある。この場合、風下に入るように移動し、抵抗の少ない位置を探る。


図5は、集団人数が多く、複数の人が先頭を引いている場合の陣形である。その後ろは大きなスリップストリームが発生する為、大変負担が低下する。ただし空気抵抗にさらされる選手が増える。そのため、先頭を走っても構わないと思うほど、それほど空気抵抗が強くない速度で形成され易い。
逆に空気抵抗が大きい高速状態では、いかに集団であっても先頭を走る負担が大きい為、縦一列となって形成され易い。


 公道での集団形成

集団形成は自転車走行にとってメリットが大きいが、公道はサーキットではなく、道路封鎖された競技場でもない。そのため、交通法規に基づいて走行しなければならない。

◆併走をしない
軽車両の併走は禁止されている為、横一列になって走行したり、風が斜めから来ているからといって、斜め後ろに車列を作る事は出来ない。これは、自動車や自動二輪車の進路の妨げとなり、また接触事故の原因となり、自転車側が刑事・民事責任を問われる。

◆自動車の後ろなどに付かない
走行時は、安全のために車間距離を取らなければならない。これは車両全てに共通する規則である。当然、車やオートバイの後ろに車間距離を取らずに潜り込んで走行をし、追突事故を起こした場合、その刑事・民事責任を問われる。

◆知らない自転車の後ろに付かない
自動車やオートバイに車間距離を取らずに接近してはならないのは容易に理解できようが、自転車同士なら車間距離を取らなくともよい、などという事も当然無い。
つまりこの集団形成は、公道においては、完全に車間距離保持を無視した過失行為である。

そのため、仲間同士など、予め後方に人が付く事を理解したうえで走行をしなければ、追突事故の原因となる。特に後方の人は前方の視界が悪くなる為、先頭を走る人が誘導をするなどし、安全を確保しなければ大事故に繋がりかねない。

特に全く知らない人の後ろに付いて走行する事は、自動車やオートバイの真後ろを走るのと同じ危険行為である。自転車は音が出ないため、前を走る人は、後ろに人が入り込んでも気付きれにくく、急なブレーキや左折で追突したり、先行車の突然の斜行で前方に障害物があらわれたなど、リスクが格段に高く、先行車両をも事故に巻き込む可能性がある。

もし、自分の後ろに張り付いてくる暴走車両に付きまとわれた場合、事故回避のために徐行して前に出すなどした方が良い。

一方で、もし自分が先行車両の後続に入りたい場合は、一声掛け、同意を得るべきである。でないと先行車両は後続車両の存在に気付かないし、同意が得られれば、先行車両が後続の安全も確保してくれる。また後ろに入ったら、後述するローテーションに参加する事がマナーと言えよう。むしろローテーションをしなければ、集団形成のメリットが生かせない。


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