スケジュールの組み方 
スケジュールは、まず長いスパンで1年程度の目標(例えば、タイムを10秒縮める)を決め、次にその目標を達成する為の1クール-3ヶ月-の目標(例えば筋力の重点強化)を決め、そして最後に毎日の具体的な練習内容(例えば、重量挙げ50回)と落とし込んでいく。
  スケジュールの策定方法

  1、目標と長期的(1年)スケジュールの策定

大まかに、自分の目指したい能力、強化したい能力などを検討し、目標を定める。
例えば、登り坂を速くしたいとか、時速40km/hで常時走れるようにしたい、300km走ってみたい、などである。
そのためには、自分の分析をまず行ない、何が得意で何を苦手としているか、自分の伸ばすべき方向は何かなどを検討するのが有効である。
これは「脚質を知る」にて詳細している。

  2、クール(2〜3ヶ月)スケジュールの策定

伸ばすべき年間の目標が決まったら、それを実現する為の3ヶ月単位の内容を決めていく。

自転車には、登坂、スプリントなど、色々な特色を持ったトレーニングが存在するが、それらをごちゃ混ぜに、毎日ころころ変えていると、効果が薄くなり十分な強化にならない。
トレーニングによっては、1ヶ月〜2ヶ月など、継続して実施する事で効果を上げるものもあるため、ここでは3ヶ月を1クールとして、その期間に徹底的な瞬発力の強化、徹底的な登坂力の強化、徹底的な平地スピード強化など、テーマを決めて重点的に強化を行なう事を提唱する。

筋力も同様で、一定期間継続をしないと効果が上がらない為、特に「筋容量」を2ヶ月、筋神経を1ヶ月で構成した3ヶ月スケジュールを基本とする。

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重点練習
基礎
持久
スプリント
高速走行
スプリント

筋力
容量

容量

容量

容量



  3、週間スケジュールの策定

クールスケジュールを元に、それを今度は1週間単位に落とし込み、1週間でどの程度の練習を実施するのかを取り決める。特に、都合が取れる日や取れない日があれば、それらを検討して、練習量の調整をする。
そして、日曜〜土曜まで、毎日どの練習を、どのくらい実行するのかを決め、毎日の練習内容を決定する。

なお、毎週同じ練習メニューを実行するように組むと、策定が楽である。一方で飽き易くもなるので、1月で内容をいじるなどするのもよい。
もちろん、2週間単位、1月単位などで、自分で細かく調整したいのであれば、それも構わない。

週間スケジュールの詳細は後述する。

練習量
150km
off 30km 50km off 30km 100km
.パワー
持久力



  4、日間スケジュールの策定

1週間にどのくらい練習をするか決めたら、今度は具体的に、この日は何の練習を入れるのかを決めていく。例えば、スプリント力の向上が目的で、月曜日をスプリントの練習としたら、その月曜日に実際にどのスプリント練習をどのくらいするのかを決めていく。日間スケジュールの詳細は後述する。

日曜日
練習量
150km
午前
スプリント×5
ダブルアクセル×5
スピードアクセル×3
午後
ステディステートIV×2
心肺パワーIV×5


  コンディション管理
大会や、ここぞというところで力を発揮したい場合、もっともコンディションを良い状態に整えて挑むのが望ましいが、このコンディションを良好に保ち続けるのは難しい為、ある程度の好・不調を想定して、大会に向けてコンディションを上げていく方法を採用するケースが多い。

例えば、筋力や技術力といった基礎的な練習を1ヶ月続け、そこから徐々に長距離走を混ぜて運動時間を増やしつつ、最後には強度の大変高いメニューを集中的に組んで、もっとも体力が向上しきったタイミングに大会が迎えるようにスケジュールを策定する。

前述のように、この体力が向上しきった状態がずっと続けば楽であるが、実際は現在の体力を100%とし、これを120%まで向上させても、その内コンディションが100%に下がったり、または120%の好調が体力を消耗させ、80%にまで低下したりなど、コンディションを常に安定させるのは至難の業である。

実際の所、能力は、上昇したり、下降したりを繰り返しながら、少しずつ上がっていくのが通常であるので、この上下を故意に発生させ、ピークが訪れるタイミングを狙って行く方法を用いる。

レベル3
レベル2
レベル1
大きな大会
1
2
3
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5
6
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8
9
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11
12

このグラフでは、4・8・10に大きな大会がある例である。4月の大会に向け、1月から基礎練習を加え、2月から強度を増やして距離を走るようにし、3月に強い負荷のメニューも加えてコンディションを上げ、4月にピークを持ってくる。
その後、強度を落として5月に回復させ、6→7と上げて、8月にピークを作る。
9月は状態の維持に努め、10月にコンディションが良いまま迎える。
11・12月は予定が無いので、自由練習とした。

  休養と回復
トレーニングによっては、直ぐに疲労から回復する負荷の低いものから、非常に長い回復期間が必要なトレーニングまである
例えば、スプリントを5本やるだけであれば、翌日にそれほど疲労は残らないが、2時間を高速で走り続ける練習を実行すれば、翌日は体力が残らない。

特に理解する内容として、
「筋肉の回復間隔」と、「糖質の回復間隔」がある。

筋肉の回復間隔とは、トレーニングによって筋肉は損傷したり、刺激を受けて、その筋肉を増加させようとする。そのためには、「筋肉が強くなっていく時間」を作ってやる必要があり、その間に筋肉に負担をかけると、発達しにくい。詳細は「筋力」にて記している。

糖質の回復間隔とは、糖を消費する解糖閾の運動を連続して実行すると、やがて糖がなくなってしまう。この糖は全回復におよそ中2〜3日を要する。そのため、1日程度しか休みを入れないで再び解糖閾の運動をしても、短時間で力尽き、十分なトレーニングにならない。詳細は、「持久力」にて記している。

このように、トレーニングによって体力は消耗するから、これを戻す「回復期間」が必要であり、回復しなければ次回のトレーニングは満足いく精度や強度、練習量を確保出来ない。
スケジュール策定において、日々の練習や内容によって消耗が違うから、休養を上手に組み込んでいく必要がある。

  強度のバランス

高い負荷を与えなければ伸びにくい能力の場合、低い負荷で永遠走行しても、向上しにくい。
その為、練習には、強弱のメリハリが非常に重要である。

例えばスプリントの場合、全力を出し切る猛スピードが重要であるが、これを中途半端な負荷に抑えて、その分本数を2倍にしても意味が無い。

これと同じ事が、日々の練習にも当てはまる。猛烈なパワーの練習では毎日は出来ないからといって、強度の低い同じような練習を毎日繰り返すのではなく、その猛烈なパワーの練習を加え、その分負荷の低い練習も加えて回復も図る。
このように、強弱をつける事で、それぞれに効果のある能力が伸びやすい。

とかく自転車の場合、快適な速度で、日々同じように走るだけという練習に終始しているケースが多いため、その中に強弱をつけたメリハリのある練習を組む事を勧めている。

  週間スケジュールの代表的なモデル

練習スケジュールの基本は、低負荷→高負荷の順に練習を実行していく。
行き成り最大の疲労を抱える練習を実施しては、翌日に体力が空になって練習が出来ない。まずは軽い負荷のトーニングを行い体力を残し、次に強度が高いトレーニングを実行して、ここでもある程度体力を残し、最後に最大の運動を実施して、その後に休養日を入れて回復させる、というのか練習スケジュールの典型である。

この典型スケジュールを元にした、代表的な2つのスケジュール法がある。

  シングルトップ

レベル3





レベル2






レベル1







シングルトップ
一週間のうち、負荷を徐々に上げていき、特に負荷の高い日を1日だけ設けるスケジュールの組み方。序盤に疲労が弱いメニューを実行し、その後、安定的に中負荷を実施、最後に全体力を消耗する高負荷練習を実施し、その後に休息をとる。高強度の練習より、毎日ある程度の強度を入れて数をこなして行く方が有効な練習の場合に適している。
例えば技術練習や、ペダリング、スプリント系など、比較的回復が早く、または一日に大量にやるより、ある程度の本数に絞り、その分精度を高めながら実行した方が向いている練習など。

  シングルトップ

レベル3






レベル2







レベル1








ダブルトップ
高い負荷の掛かる日を一週間に2回設け、階段状に負荷を増して行くスケジュールの組み方。練習内容の強度にバラツキがあったり、高負荷のメニューが多い時に適しているが、毎日一定の練習を持続的に必要とするメニューには向かない。
向いている練習は、筋力トレーニングや、糖質を消耗する解糖閾での持久メニューなど。


これ以外に、特に時間が摂りにくいであろう、社会人を想定した、当クラブが進めるスケジュールを紹介する。

  水・土日ピンポイント

レベル3







レベル2







レベル1







平日特定日タイプ

時間が取れる土日に練習を入れる人が多いが、これだと5日も間が空いてしまい、せっかくの週末の効果が低下してしまう。水曜日にも実施し、週末の効果を高める方法である。逆を言えば、平日は水曜日以外を休養にしてしまって構わない。

水曜日に練習を入れると、日曜日から中2日になり、また土曜日にも中2日となる為、休養感覚として最適であり、持久・筋力系も効果的に伸ばしやすい。限られた時間の中で有効に実施できるものを選択すると良い。

土曜日に高負荷を実行すると、翌日走れなくなるため中負荷に留め、日曜日に最大負荷を実施する。表では高負荷としたが、時間がなければレベル1〜2でも良い。
また、時間が取れるのであれば、火曜日や金曜日にレベル1の練習を短時間加えても良い。

  週間スケジュールの例

前述の通り、トレーニングには休養間隔が必要であり、また、トレーニングには強弱をつれるのが効果的である。そこで、各トレーニングの実施間隔や負荷を考慮して、何曜日に何のメニューを組むのか、策定していく。

瞬発力



筋力





心肺持久





有酸素

この表は、心肺持久と筋力を、中2日以上間隔を空け、瞬発力は回復が早いため、マメにくんだ例である。有酸素運動は、練習の負荷を考慮しながら、周に4回配置し、
月曜日と木曜日に向けて階段上に最大負荷が来るようにダブルトップでスケジューリングしている。

  日間スケジュールの策定

前記の例の場合、日曜日は瞬発力と有酸素の日であるから、具体的にどんなメニューを入れるのかを決める。

また、午前と午後で練習を分けている場合は、午前に強度の弱いものを、午後に強度の強いものを分けるなど、実際に実行していく形にしていく。

エンデュランス1h
スプリント×5
スプリント×5
パワーダッシュ
/エンデュランス1h
ステディステートIV×2
スプリント×5
エンデュランス1h
スプリント
パワーダッシュ
/エンデュランス1h
ステディステートIV×2
エンデュランス3h


この表は、前記の週間スケジュールを、実際に毎日実行するメニューに落とし込んで作成した例である。

日曜日は、午前に1時間有酸素運動をし、夜にスプリントを5本入れる。
月曜日は、午前にスプリントを5本入れてから出勤なりし、帰宅後、一度外でパワーダッシュを行い、その後室内ローラーで1時間有酸素運動をする。
という具合である。